アドミッション・ポリシー

地域共生社会課程は、地域社会教育の視点から、学校教育と連携した国際理解及び生活環境教育等を通して、 地域の国際化、環境保全等を視野に入れた学校教育以外の教育関連専門家等の養成を目標としております。

  以上のような人材養成の観点から、地域共生社会課程では、次のような人を広く求めます。

1.地域社会における各種教育力を向上させることに情熱を有する人
2.自ら学ぼうとする学習意欲を有し、諸問題に柔軟に対応できる基礎的な学力を有する人
3.周囲とのコミュニケーション能力や協調性を有している人
4.他者への思いやりを持ち、ボランティア活動等に強い興味を有する人
5.国際文化交流の振興、異文化及び地域文化等への理解を持ち、地球的視野に立った地域への環境保全に情熱を有する人
6.諸問題解決に地道で意欲的な取り組みができる人

習得可能な資格

中学校教諭の一種免許状: 社会、家庭、英語
高等学校教諭の一種免許状: 地理歴史、公民、家庭、英語
学芸員(平成24年度よりの新しい制度にも対応しています)
社会教育主事の資格を得るための「社会教育に関する科目」(24単位)を
本課程の卒業要件単位を履修するなかで無理なく修得できます。

地域共生社会課程について

初代課程主任  鶴島博和

地域共生教育は特異な課程である。何らかの特定の学問を基礎にしているわけではない。地域、共生、教育の三つのキーワードがあるだけ。言わば、概論がなくて、いきなり特殊講義に入るようなものである。学生諸君のとまどいは想像に難くない。しかし、そこには、譲れない一つのフレームがある。それがこの三つのキーワードである。
20世紀は発展の世紀であった。全ての価値は発展を基準としていた。国民国家は先を争ってその生産力を競った。産業化社会の進展のなかで、共同体的社会の解体は進み、人々は個別化していった。たしかに我々の生活は豊かになっていった。私が大学に入ったころ、学生が車を所有するというのは特権的な階層にのみ許されることであった。それがいまはさほど難しいはない。我々の周囲にはモノが溢れている。日本を始めとする産業先進国の豊かさは、巨大な生産力によって達成された。最初この生産力は国境のなかに納まっていた。しかし、前世紀も後半になると、生産力は国境を拡大していったのである。多国籍企業は言うに及ばず、小さなメーカーでさえ生産の拠点を海外に求めていった。
人の移動が始まった。世界中から先進国の富を求めて、国籍や文化を問わずに多くの労働力が流入してきた。こうした人々の流れは、東京や大阪といった大都会から、地方へと広がっていったのである。いまや、隣に違った言葉を母語とし、違った宗教や文化をもつ人々が生活することはさほど珍しいことではなくなりつつある。富山県小杉町での「コーラン」破り捨て事件は、多文化的状況が地域社会でいかに進行しているかを教えてくれる。私たちは、国際化した多文化の世界に生きている。
強大な生産力は資源を食い荒らし、環境そのものを危機に陥れている。地球との共生ということが人類の課題になりつつある。「発展」という考えの問題点は、その度合いをお金と時間に一元化し、現在の富のために未来を食いつぶしていることにある。我々の豊かな生活の負債の請求書を孫やひ孫の代に残している。それはまさに、『モモ』の時間泥棒の裏返しの姿である。『モモ』が訴えて止まないのは、豊かさの尺度を多元化し、お金と時間に一元化しないこと。エコマネーにエンデが注目したのもこうした理由による。人々が多様な特性で互いに依存し合う関係こそが共生なのである。しかし、地球規模で国家の枠を超えて拡大していく発展の前に、共生はありうるのであろうか。それを我々は、どこかで限界点を越えて行くのであろうか。
このボーダーレスの時代に、我々は地域社会における教育力の回復こそが、共生を実現する手段だと信じて疑わない。この幼稚な楽観主義は、例えば、大阪教育大附属池田小(大阪府池田市)での乱入殺傷事件を前にすると、消え入りそうになる。それにもかかわらず、遠い道のりの中での一駒と信じたい。子どもたちを中心にしない限り、共生はありえない。
これは、国家と発展を前提としてきた我々の学問の再考でもある。学生諸君は、この回りくどい課程に在籍しながら、自らの地域論を作らなければならない。地域共生教育原論と原論演習は、そのための最初の武器を与えるものである。原論では、ノート、カードの作り方、図書館の利用方法、コンピュータを通しての情報検索、論文の書き方を学習した。原論演習では、地域を限定して、いくつかの柱を立て、それについて調査し発表することに主眼を置いた。地域は天草と芦北に限定した。そこで、1.環境、2.歴史、3.文化、4.福祉、5.環境保護、6.国際化の6つの柱を立て、2回生24名を6つのグループに分けて、調査と発表を行った。この小冊子では、その発表成果をまとめたものである。
こうした訓練を通じて、学生諸君が自らの目と足で、地域における課題を設定し解決していく知性を獲得してもらいたいと思う。すべては始まったばかりである。

この文章は2001年に作成された「地域共生社会原論演習 報告書 第1号」の原稿の一部をそのまま抜粋したものです。