気象衛星データにみる黄砂現象

2010/08/08 12時 黄砂なし 2010/11/12 12時 黄砂飛来時

撮影場所:熊本県富岡ビジターセンター(天草郡苓北町方面の空の様子)


■はじめに
日本では春季に黄砂がしばしば飛来する.年によっては秋季や冬季にも黄砂現象が観測される (気象庁,黄砂観測日数表).
ここでは,運輸多目的衛星 (MTSAT,通称ひまわり)データの時系列画像を用いて,2010年春に観測された黄砂現象を紹介する.

■MTSAT単バンド画像[2010/3/20 12:30JST]
画像領域 可視画像(0.55〜0.90μm) 3.7μm画像(3.5〜4.0μm)
水蒸気画像(6.5〜7.0μm) 赤外1画像(10.5〜11.3μm) 赤外2画像(11.5〜12.5μm)

■熱赤外差画像による黄砂の可視化[2010/3/20 12:30JST]
左の画像は,赤外1画像と赤外2画像の差分画像(ここでは,熱赤外差画像とよぶ) を作成して黄砂を可視化したもの(画面中央付近の濃い白い部分が黄砂領域). 熱赤外差画像は水蒸気と鉱物質エアロゾルの11μmと12μmにおける 相反する吸収特性を利用した鉱物質エアロゾル検出手法であり,火山灰を含む噴煙や黄砂の検出に 非常に有効である.
熱赤外データを使用するこの検出方法は,夜間の検出も可能であるため,黄砂現象や火山噴火の発生 および移流の様態を時系列画像で非常によく捉えることができる.特に静止軌道から観測している MTSATによる画像は固定視野であり,時間分解能が30分〜1時間と高いため大変有用である.

■6時間毎の時系列画像[2010/3/19 09:30JST〜3/21 09:30JST]
3月19日9時30分の画像に示されている中国内陸部の東経90°〜105°北緯45°付近 ゴビ砂漠の北側の黄砂は低気圧の移動に伴って東に輸送された. 3月20日9時30分には東経105°〜120°北緯30°〜40°陝西省西安付近, 黄土高原の北側で新たに発生した黄砂気塊が合流し,黄砂気塊は大きくなった. 低気圧が寒冷前線を発達させるに従い,黄砂気塊は寒冷前線の後部に連なる形で 細長く姿を変えていた.3月20日21時30分には日本付近まで到達し, その後,青森県以南の日本列島を横断して太平洋上へと移流した.

動画 [2010/3/19 00:30JST〜3/21 12:30JST]
※動画の右下に表示される時刻は世界時.日本標準時=世界時+9時間.

■関連論文・Webサイト
  • 飯野直子・後藤将太・中村恭浩・金柿主税,2010年春季と秋季の黄砂現象,熊本大学教育学部紀要 自然科学,Vol.61 p.39-46,2012. (pdf)
  • 飯野直子・後藤将太・金柿主税,黄砂現象の教材化,日本地学教育学会第65回全国大会広島大会講演予稿集, pp.118-119,2011. (pdf)
  • Naoko Iino, Kisei Kinoshita, Andrew Tupper and Toshiaki Yano, Detection of Asian dust aerosols using meteorological satellite data and suspended particulate matter concentrations, Atmospheric Environment, Vol. 38(40), pp.6999-7008, 2004.
  • PIVによる黄砂の輸送解析
  • SiNG K Asian Dust Events -Satellite Analysis and Ground Observation-


謝辞:東京大学地震研究所/生産技術研究所において受信・処理されたMTSATデータを使用して解析を行いました. 深く感謝申し上げます。
天草苓北カメラの設置について熊本県富岡ビジターセンターに深く感謝申し上げます。


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