火山から大気に放出される火山ガスの成分のうち、最も多いガスは水蒸気である。 一般に、高温の火山ガス中にはHF,HCl,SO2,H2S,CO2, H2,N2,He,Ar,CH4などの多くの種類の成分が含まれている。 三宅島や桜島などのような活動が活発な火山は、SO2を多く含む高温型の火山ガスを 火口から集中的に噴出している。 |
短期的評価 | 一時間値の1日平均値が0.04 ppm以下であり、かつ、1時間値が0.1 ppm以下であること |
長期的評価 | 1日平均値である測定値につき、測定値の高い方から2 %の範囲内にあるものを除外した値 が0.04 ppm以下であり、かつ、日平均値0.04 ppmを超える日が2日以上連続しないこと |
東京都等による火山ガス固定観測局は2000年12月の3局体制から始まり (A1:支庁局,A2: 空港局,A3:阿古局)、2001年9月に3局(B1: 逢の浜局, B2: アカコッコ局, B3:伊ヶ谷局)、2002年3月に4局(C1:三池局, C2:村役場局, C3:坪田局, C4:薄木1局)、2004年4月に4局(D1:美茂井局,D2:御嶽神社局, D3:薄木2局,D4:ふるさと局)増強されて14局体制となっている。 |
大局的にSO2の年平均濃度は減少傾向にある。2004年と2005年の東部の局において、 平均濃度が2003年よりも上昇しているが、これらの平均濃度の変動は、 気象庁によるSO2放出量の観測結果 と対応しており、放出量の増大によるものと理解できる。 2005年以降は放出量、平均濃度とも減少傾向が明らかである。 |
環境基準の0.1ppmを超える高濃度発生頻度をみると、2007年の時点では、 A2(空港局), B1(逢ノ浜局),C1(三池局), C2(役場局), C4(薄木1局), D3(阿古局)において、まだ環境基準を達成していない。 また、これらの測定局では年平均値も環境基準を達成していない。 |
ACGIH(米国産業衛生専門家会議)勧告の許容濃度2ppmを超える高濃度発生頻度は、 2007年の最高値がC2(役場局)の0.7 %となっている. |
三宅島の地表における火山ガス濃度は雄山の 山頂高度付近の風に支配的な影響を受けていると考えられるが、 山頂風の直接測定は行われていない。 ここでは高層気象観測点のうち最も三宅島に近く、同じく海上孤島である八丈島 (三宅島の南南東約110 km)の指定気圧面925hPa(海抜高度で約830m)の 高層風を三宅島上空の風として代用する。 |
上の図は、2002年5月から1年間の八丈島925 hPa風について風速階級別の発生頻度を 示している。風速の階級は、弱風:0-3 m/s、並風:4-6 m/s、強風:7-9 m/s、 疾風:10 m/s以上の4段階に分類している。一般に太平洋高気圧が支配的な夏季には 風は穏やかであると考えられるが、6〜8月でも7 m/s以上の風が60〜70 %の頻度で 記録されている。例えば、内陸部にある館野では約40 %の頻度でしか7 m/s以上 の風が吹かないことを考慮すると、八丈島は海上孤島であるため、1年を通して 比較的風が強いことがわかる。 |
上の図は風配図である。風向の特徴から、季節を春:3〜5月、夏:6〜8月、 秋:9〜10月、冬:11〜2月に分けている。風向を16方位で示している。 特徴的なのは、一年を通して北西と南東の風が吹くことはほとんどないことである。 季節による風向の特徴としては、夏季は太平洋高気圧や台風による南西風が支配的であり、 冬季は西高東低の冬型の気圧配置が安定しやすいため、ほとんど西よりの風が吹いている。 春と秋には、高気圧と低気圧とが交互にやってくるため風向のばらつきが大きいが、 春は南西の風が多く、時には北東の風が吹いている。秋には東よりの風と西よりの風が 同じ程度で吹いている。 |
上の図は2001年1月から2005年9月までの全ての火山ガス観測局における
高濃度SO2発生頻度を示している。実線が0.1ppm以上、破線が1ppm以上の
発生頻度を表す。
三宅島付近の風系に見られるように、三宅島雄山付近の風は一年を通して強いので、
風向の季節特性が各局における各月の高濃度SO2の発生頻度に大きな影響を
与えることになる。三宅島山麓部の火山ガス環境は以下の通り要約できる。 (1)火口の東〜南東部(C1, C2, A2)では高濃度となる頻度が冬季に非常に高い。 (2) 南西部(C4, D3)では、一年を通して高濃度の発生頻度が比較的高い。 (3) 東北東部(B1)では冬だけでなく、夏季も高濃度発生頻度が高い。 (4) 北東部(D1)では春・夏季の高濃度発生頻度が高く、秋・冬季は低い。 (5)北(A1)と南東部(C3)における高濃度発生頻度は高くない。 (6)南東部のA2とC3局の間に位置するD2局では、高濃度発生の特徴はA2局に類似であるが、 発生頻度は約1/3と明らかに低く、1ppm以上の高濃度の発生頻度は一年を通して高くない。 (7) 西南西部のD4局は、隣のA3局と高濃度発生の傾向が類似であるが、頻度は1/2程度である。 |
口頭発表 | 飯野直子・金柿主税・木下紀正, 三宅島島内火山ガス環境と植生の経年変化, 第27回日本自然災害学会学術講演会講演概要集, pp.35-36. |
2008.9 | |
口頭発表 | 飯野直子・木下紀正・Thomas BOUQUET・金柿主税, 三宅島島内火山ガス濃度と植生の経年変化, 第8回大気環境学会九州支部研究発表会講演要旨集, pp.11-12 |
2008.1 | |
口頭発表 | ppt-pdf | IINO Naoko, KINOSHITA Kisei, SAKAMOTO Masaya, BOUQUET Thomas and KANAGAKI Chikara, High Sulphur-Dioxide Concentration Events at the Surface of Miyakejima and Sakurajima Volcanoes , Cities on Volcanoes 5 Conf., Shimabara, Japan |
2007.11 |
口頭発表 | 飯野直子・木下紀正・福原 稔・片野田洋・金柿主税, 三宅島島内火山ガス濃度の経年変化―2001年1月〜2006年10月―, 第7回大気環境学会九州支部研究発表会講演要旨集, pp.17-18 |
2007.1 | |
会誌 | 飯野直子 三宅島島内高濃度火山ガスハザードマッピング, 鹿児島県地学会誌, No.92, pp.3-12 |
2006.9 | |
国際シンポジウム | Naoko Iino, Kisei Kinoshita, Toshiaki Yano and Shuichi Torii, Estimation of Miyakejima volcanic gas hazards using vegetation index images, Proceedings of the 11th CEReS International Symposium on Remote Sensing, 13-14 December 2005, Chiba, Japan, pp.105-110 |
2006.4 | |
報告書 | 木下紀正・飯野直子・坂本昌弥・金柿主税, 三宅島火山ガスの動態と防災体制, 科研費特定領域「火山爆発のダイナミクス」2005年度研究成果報告書, pp.406-414 |
2006.3 | |
口頭発表 | 飯野直子・木下紀正・金柿主税・矢野利明・福原 稔, 三宅島島内の火山ガス環境と植生, 第6回大気環境学会九州支部研究発表会講演要旨集, pp.7-8 |
2006.1 | |
学術論文 | 飯野直子・木下紀正・矢野利明, 三宅島における高濃度火山ガス事象の地域特性, 自然災害科学, Vol.23, No.4, pp.505-520 |
2005.2 | |
学術論文 | Naoko Iino, Kisei Kinoshita, Megumi Koyamada, Chikara Kanagaki and Akihiko Terada, Analysis of high volcanic gas concentrations at the foot of Miyakejima volcano, Japan Journal of Natural Disaster Science, Vol. 25, No.2, pp.85-91 |
2004.3 | |
国際シンポジウム | Naoko Iino, Kisei Kinoshita, Toshiaki Yano and Shuichi Torii, Dispersion of volcanic clouds at Miyakejima and gas concentrations at surface stations CD-ROM Proceedings of 1st International Symposium on Micro & Nano Technology, Honolulu, USA, XXIII-C-01 pp.1-6 |
2004.3 | |
口頭発表 | 飯野直子・木下紀正・矢野利明, 三宅島火山ガス高濃度事象の地域・季節特性, 第4回大気環境学会九州支部研究発表会講演要旨集, pp.11-12 |
2004.1 | |
情報のひろば | 小山田恵,木下紀正,寺田暁彦,飯野直子,金柿主税, 三宅島島内の火山ガス高濃度事象と八丈島高層風の特徴, 天気, Vol. 50, pp.553- 559 |
2003.7 | |
研究報告 | 飯野直子,小山田恵,木下紀正,金柿主税, 三宅島噴煙の衛星画像と火山ガス高濃度事象 南太平洋海域調査研究報告,No. 37, pp.66-75 |
2003.2 | |
口頭発表 | 飯野直子,小山田恵,金柿主税,木下紀正, 三宅島山麓における火山ガス濃度変動と帰島問題, 第21回日本自然災害学会学術講演会講演概要集, pp.145-146 |
2002.9 |