教職大学院

Professional graduate school

熊本から新しい教師教育が始まる

大学院教育学研究科・教職実践開発専攻は、教職大学院の課程です。現職教員学生と学部新卒学生 (ストレートマスター)、研究者教員と実務家教員が、相互に学び合う場が充実していることで、それぞれの立場から、多面的に地域の学校を支える活動を展開しています。
教職大学院は、従来の3つのコース(学校教育実践高度化コース、教科教育実践高度化コース、特別支援教育実践高度化コース)に加えて、令和7年度からは教育の国際化実践高度化コースを設立し、新たな体制をスタートさせました。

教育学研究科長 挨拶

藤田 豊
教育学研究科長
藤田 豊

 

 現行の学習指導要領は、平成29年(2017年)から小学校、中学校、高等学校と順次改訂・実施され、令和6年(2024年)12月には、文部科学大臣から中央教育審議会に対して次期学習指導要領の改訂について諮問が行われました。令和12年(2030年)に向けて、令和の時代の日本型学校教育の着実な実施に向けた全面改訂に向けて、我が国の子どもたちが等しく一定水準の教育を受けられるように、小学校、中学校、高等学校の児童生徒に教えなければならない最低限の学習内容を示した教育課程の基準作りが始まりました。

 これまで学習指導要領の改訂を重ねる過程において、教育課程編成上の問題点が、各教科における教育内容の多さや年間平均授業時数の多さが指摘されています。また、教員の長時間労働も続いており、諸外国の教員に比べて非常に長く、働き方改革の必要性も指摘されています。その一方で、子どもの多様性(個性、特性、背景等)の視点から見ると、不登校児童生徒の増加や通常の学級における特別な支援を必要とする子どもの割合の増加や日本語の指導が必要な外国籍・日本国籍の子どもたちの増加といった問題は、学校現場が抱える実情が危機感となって現れています。

 さらには、令和元年(2019年)に発生した新型コロナ感染症の爆発的な感染拡大は学校教育をも直撃し、それまでの通常の対面形式での実施を困難にさせました。事態を改善するために、GIGAスクール構想の早期実現を加速し、学校教育はデジタル化へと急速に転換が図られましたが、この間、生成AI研究の発展もあり、令和12年(2030年)に向けて、デジタル社会における学校教育の役割を見据え、子どもたちに情報を読み解く力をどのように身に付けさせるかという問題は、今後益々重要な議論の対象となるでしょう。

 また、今から10年先20年先の未来の人口動態のデータに目を向ければ、特に地方における人口減少は著しく、地域の過疎化は自治体単位あたりの小学校、中学校の設置数、高等学校の設置割合の減少に明確に現れています。人口減少は教育機関の機能維持を担う人材だけでなく、少子化による教育機関の存続にも影響し、初等・中等教育に留まらず、高等教育機関である教員養成系大学・学部の運営にとっても深刻な懸念材料です。

 教育学研究科(教職大学院の課程)は、平成29年に熊本大学教育学研究科に設置され、今年度2度目の改組を行いました。附属学校等イマージョン教育に係る技術力を高め、公立学校も含めて外国につながる児童・生徒の生活・学修指導について学びを深め、グローバルマインドを育成する4番目のコース「教育の国際化実践高度化コース」です。

 次期学習指導要領の全面改訂における諮問のなかで、今回特に強調されている項目の一つは、「“学校がそれぞれの課題に応じたカリキュラム編成ができる柔軟な教育課程”の編成について」です。いまこそ、教職大学院の教育研究機能をより一層強化し、開設当初からの運営方針である「理論と実践の往還」を大学院教育の推進力の要に、大学院生一人ひとりが常に学校現場での実践に身を置きながら、実務家・研究者の教員スタッフと連携協働し、仲間と支え合いながら、自ら問い、自ら考え、自ら学ぶ教育課程を充実させて参ります。

教職大学院の概要

 教育学研究科は、修士課程の大学院研究科として昭和61年4月に設置され、平成21年4月から、学校教育実践専攻と教科教育実践専攻の2専攻で構成される組織となりました(修士課程は令和2年度から学生募集を停止しています)。その後、平成29年4月に、教職大学院の課程(教職実践開発専攻)を新設(入学定員15名)、令和2年4月から、学校教育実践高度化コース、教科教育実践高度化コース、特別支援教育実践高度化コースの3コース制を導入し、入学定員30名に改組・拡充しました。令和7年4月からは教育の国際化実践高度化コースを新設し、全4コースで構成しています。

 教職大学院では、学校教育の現場や教育委員会等との密接な連携に基づき、理論と実践の往還・融合を通じた高度な教員養成及び教員研修の体制を整え、機能強化を図っています。学部卒の大学院生と現職派遣大学院生、研究者教員と実務家教員の協働により、高度な実践的指導力の育成を目指す点に特色があります。修了者には教職修士(専門職)の学位が授与され、教員専修免許状も取得できます

「生涯協働し、学び合い続ける」教員の養成

  • 4つのコース(学校教育実践高度化、教科教育実践高度化、特別支援教育実践高度化、教育の国際化実践高度化)
  • 研究者教員と実務家教員、現職教員学生と学部新卒学生の相互刺激
  • それぞれの教職経験や研修ニーズに応じた力量形成・資質涵養

コースの概要

学校教育実践高度化コース

学校や地域の教育における授業実践開発、生徒指導・教育相談、学級経営・保健室経営・学校経営に関わる深い理解と優れた資質・能力を持つ高度な教員の養成を目的とするコースです。

教科教育実践高度化コース

教科教育実践高度化コースでは、学校や地域の教育を深く理解し、教科教育の授業実践開発についての深い理解と優れた資質・能力を持つ高度な教員の養成を目的とするコースです。

特別支援教育実践高度化コース

特別な支援を必要とする幼児・児童・生徒に対する深い理解と指導力、校内支援体制のコーディネート力、インクルーシブ教育システムに関する理解等において高度な資質・能力を持つ教員の養成を目的とするコースです。

教育の国際化実践高度化コース

教育環境が国際化に向けて急速に変化しつつある状況において、外国人児童生徒と日本人児童生徒が共に学び合う教育を実施するために必要な教育の方法(英語と日本語によるイマージョン教育)や適切な生活支援・学習支援に係る深い理解と優れた資質能力(グローバルマインド)を持った高度な教員の養成を目的とするコースです。